クロスオーバー

 今年も残りわずかとなりました。年を重ねるにつれて1年が過ぎるのがとても早く感じるようになりました。制作に没頭していると時間が本当に早く流れてしまいます。集中出来ているのはいいことなんですが、その分時事に疎くなってしまって世の中で起きていることが分かりにくくなってしまうのは困りごとです。

 

 それはともかく、前回までは支持体や基底材の話をしていたので、今回は描画における絵具についてちょっと考えてみます。そこで、ちょっと今思いついただけの一般に絵具と呼ばれるものを列挙したいと思います。


・アクリル絵具

・油絵具

・水彩絵の具

・岩絵具

・水干絵具

・パステル絵具


 ざっとこんな感じですかね。広義で考えると岩絵具も水干絵具も水彩絵具なのですが、「絵具」とつく名称のものをとりあえず並べただけなのであしからず。更に水彩絵具にはポスターカラー、ガッシュ等があり、実際に売っている絵具の種類は更に多くなります。基本的に絵具の種類というのは展色材(簡単に言うと色の元である顔料を「伸ばす」材料)によって分けられます。それぞれの展色材は、アクリル絵具はアクリルエマルジョン、油絵具は乾性油、水彩絵具はアラビアゴム、岩絵具は膠、パステル絵具は主に蝋材、といった具合になります(正式には展色材は固着剤と溶剤によって構成されるので、固着剤のことを指しています)。


 ただ絵具の種類や定義もまだ判然としないところが多々あって、奥が深いところでもあります。絵具自体も、従来までなら洋画用、日本画用、版画用といった具合にそれぞれの専門分野によって用途が分かれていたものを、近年になって様々なアーティストが専門領域外の絵具を使用することによって、他領域へ専門外の絵具が頻繁に行き交うことが普通になりました。専門外の絵具を使うことは、決して正しいこととは言えないのかもしれませんが、長い目で見れば表現の可能性を押し広げることにも繋がるでしょう。一見無謀とも思える絵具の使い方が、思わぬ効果を生むこともあるのです。


 簡単に言ってしまうと、僕は洋画家ならこれを使ってはダメ!とか日本画家ならこれ!といった決めつけが嫌いなので、自分の専門外の画材であれとりあえず試して使ってみるぐらいの冒険心は必要だと思いますね。肌に合わないかどうかを判断するのはあくまでも自分なので。

 確かに「これとこれは混ぜたら駄目だろ…」と思う組み合わせもあるんですが、よほどの劇薬同士でなければ、混ぜてみるのも一見の価値ありだと思います。僕も絵具を扱う上で何度も失敗を積み重ねてきましたし、今でも失敗はします。でも失敗の度に学ぶことはあったし、それが結果として自分の糧になっていくわけですから。絵具を扱うときほど、「失敗は成功の基」という言葉を身に染みて感じることはないと思います。


 次回以降はもうちょっと具体的に絵具のことを考えてみたいと思います。