支持体備忘録その2

前回、支持体についてあれこれ考えていましたが、今回もその続きとなります。絵を描く人、作品制作をする人にとってベースとなる材料の問題は永久課題とも言えるほど大事なことだと思うので、少々しつこくても考えてみたいと思います。

 僕は現在、絵を描く場合は基本的にキャンバスを用いることにしているんですが、その一番の理由としてはやはり描き心地が良いからです。絵筆をキャンバスにつけた瞬間の何とも言えない感触、その実感はよりキチンと張れたキャンバスほど深く感じ取ることが出来ます。勿論、人によってはこの絵筆を跳ね返すような描き心地が嫌いだ、好ましくないと感じる人がいるかと思います。ですが、僕の場合一度病みつきになってしまうと中々やめられない性質なので、しばらくはこの「格闘的」なやり方で頑張ってみようと考えています。

 キャンバスを用いるのは描き心地の問題だけではありません。コストの問題で考えると自分でパネルを作る方が安上がりになると思うのですが(ものによるとは思います)、作品を収容するスペースの問題からすれば、キャンバスの方がロールを巻けて、木枠も比較的簡単に解体出来るわけですから楽だと思います。絵具を分厚く盛った絵の場合は、画面の損傷が出てしまうため不可能ですが、薄塗で仕上げる場合にはキャンバスを巻いてもさほど損傷が出ないので良いのではないでしょうか。絵を描いたキャンバスを巻くと少なからず亀裂や破損が生じかねないし、また木枠に張り直すときにも力の入れ具合によっては作品を破損させる恐れがあるので、作品を厳重に管理したい、少しでも傷つけたくないという方にはあまりお勧めできない収納方法ですが、僕はあまり繊細な描写をするタイプではないのでこのやり方にしています。

 キャンバス・パネル・紙が基本的な支持体だと思うのですが、後はフレスコ画などが代表的な壁画があります。僕は大学の実習の時に小さい画面で2、3回やっただけなのであまり詳しくありませんが、簡単に言ってしまうと絵具(顔料)を壁に封じ込める描法ですね。絵具と壁が同化するんです。なので作品自体はかなり堅牢です。壁が壊れない限りは作品も破損しません。キャンバスなどの場合、基本的に絵具はメデュウムを媒体とした顔料を「乗せる」だけなので年数が経過するにつれて、勿論保存環境にもよりますが剥落していきます。フレスコ画はその面での不安が少ないので安心ですが、壁が乾くまでに絵を描かないといけないという難しさもあります。乾いてしまうともう描き足せないわけですから。

 

 少し考えただけでも支持体の奥は本当に深いと思います。これ以外にもメデュウムによってはガラスや木、金属やプラスチックに絵を描くことだって出来ますし、これからも研究していく余地はまだまだあると感じます。今回はここまでですが、次回からは基底材や絵具についても考えていきたいと思います。

 

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